☆ 連載『The Foolish Dragon』☆ ショートストーリー 「清水家の節分」

連載『The Foolish Dragon』

〜 清水家の節分の巻 〜

 ——これは、
まだ竜之助が中学生だったころの話である——

 

オカルト系ミステリー作家の
父は、とてもとても信心深い。

父に似て竜之助も、とても信心深い。
そして、弟の大虎も、わりと信心深い。

人一倍現実的でクールな母だけは、
さほど信心深くはなかったが……。

そんな信心深い清水家にとって、
節分の日の豆まきは、重要な行事だった。

 

晩ごはんを食べ終わった清水家——

 

夜8時になると、父が
神棚にお供えしていた豆の入った
4人分の枡をリビングのテーブルの上に置いた。

すでに、竜之助と大虎は、
鬼のお面を頭につけて待っている。

父  :よーっし、豆まき始めるぞーーー!

竜之介:ハーイ!

大虎 :ハーイ!

母  :ハイハイ

父  えぇな、今年も一年、
    無事幸せに暮らせるように、

    しっかり豆まきすんねんで!

竜之介:ハイッ!

大虎 :ハイ!

母  :後で、家の中にまいた豆、食べるから
    ちゃんと全部集めてやー

竜之介:ハイッ!

大虎 : 外にまいた豆は?

父  家の中の悪いもん
    外に出すためにまいた豆なんか食って、

    病気にでもなったらどーすんねん!
    掃除して捨てるんや!

竜之介えっ!豆に悪いもんついてるってこと?

父  豆で悪いもんを外に出すんやから…
    まぁ…そうとも言えるか……

竜之介:へぇ~

大虎 : ふ~ん

 

こうして、この年も
清水家の豆まきが始まった—— 

 

「鬼は~外~」

リビングの窓から庭の方へと向かって
勢いよく豆をまく4人

「福は~うち~」

今度はうちの中へと勢いよくまく4人

リビングを出て廊下へ
そして玄関から外へも豆はまかれた。

豆をまき終わって
家中の豆を拾い集める4人——

父と母は、
廊下と玄関の方へといった。

竜之助と大虎がリビングの床で
よつんばいになって豆を拾っていると——

窓の外、
庭の方から何やら音が聞こえてくる……

バリバリ バリバリ バリバリ
バリバリ バリバリ バリバリ

竜之介:ん???

大虎 :ん???

顔を見合わせる2人——

窓の近くにいた竜之助が 、
カーテンを開けて
音の聞こえてくる庭の方を見た。

竜之介!!!

竜之助の表情がギョッとしたかと思うと、

竜之介ハナコーーーッ!!!

と、叫んで、
窓を開けて庭に飛び出していった——

バリバリ バリバリ バリバリ
バリバリ バリバリ バリバリ

バリバリというあの音のもとは……

犬の花子だった!——

豆は、家の中のあちこちにも庭の方へも
清水家一家4人によって盛大にまかれていた

特に、リビングの窓に面した
太郎と花子のいる庭の方へと巻かれた豆は……
多かった……。

外に向かって気兼ねなく豆をまける
唯一の場所だったのだから……。

その大量の豆を花子が拾い食いしていた……。

バリボリ バリボリ バリボリ
バリボリ バリボリ バリボリ

と、大きな音をたてながら……。

それに気づいた大虎が叫ぶ——

大虎 とお~ちゃん、かあ~ちゃん!

父  :なんや~どうしたんや~?

と、言いながら、父がリビングに入ってきた。

後から母も入ってきた。

リビングのカーテンが、
冬の冷たい風に吹かれて大きくなびいている。

母  さむーーー!!!
    何で窓開けっぱなしにしてんの?!

と言って、大虎の顔を見た。

大虎 だって、ハナコがーーー!

と言って庭の方を指さした。

3人で窓の外を見ると——

そこには、花子の口を、
ムリやりこじ開けようと格闘する
涙目の竜之助がいた——

竜之介ハナコ!出せ!出すんやー!

口を開けないように
完全に歯を食いしばっている花子——

竜之介ハナコー!死んだらどうすんねん!
    イッテェーーー!!!
    ハナコーーー!!!

時折、少し口を開けられそうになっては、
必死で口を閉じようとするハナコの
鋭い歯にあたっては叫んでいる竜之助……

太郎は、その横の方で、
遊んでもらっていると思っているかのように
うれしそうにしっぽをふっている。

父  オイっ!竜之助、
    ハナコ、あの豆食べとったんか?!

竜之介 :うん……

あぁあ……という表情で、父はうなだれた……。

母  竜之助、もうえぇから、はよ、
    ハナコとタロー、玄関にいれ!

竜之介:うん…わかった……。

 

この節分のあと——

花子の赤い首輪には、しばらくの間、
父が世話になっている寺の和尚に
特別に(かなりの無理を言って)
つくってもらった、

ペット用の小さな祈祷札がつけられていた……。

 

 

—— 今日のところは、これでおしまいっ! ——

 

  

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